時間にも質量がある ~上野の森美術館大賞展

明日をひらく絵画 第37回 上野の森美術館大賞展へ。

ずーっと見ていくと、なんとなく落ち着いた気分、というか、やや過剰にまったりした気分になっていく。個々の作品故というより、力を込められた主には100号級の大きな絵がずらっと並んでいるという、単純にその物理的圧力もすごい。

そう感じつつ一番大きな部屋でぐるっとまわりを見渡した自分は、これが書の展示であればこの圧してくる感じは少なかろうとふと思った。余白が多いとか少ないとか、色彩とかを越えて、かかっている「時間」は一つの質量である。
これらの絵を描くのにかかった時間を総計すると、どれ位になるだろう。入選142点で2万時間位かな。このあたりの根拠はごくごく雑駁だが、実勢上フルタイムアーティストでない人も多いだろうので1点あたり3時間/日X1.5カ月X142で推定。でもそうすると起きてる時間全てを使って一人の人が全部描いたとして3年半か・・それぢゃ無理な気がする。ということは恐らくもっとかかってるのだ。

絵を描くって自分が思っているよりすごく大変なことなんぢゃないんだろうか・・という思いがよぎって少しコワくなった。
もちろん全てがそういう作品でなく、抜け感のあるさっぱりした作品も時々あって、そこで息つぎをしながら歩いていったが、主として技法、そして体力・気力や趣味嗜好等々の理由から大きい画面も爆速で描くという向きの戦略または制約のある自分からすると、この時間的圧力はもう異界に迷いいったという感じすらしてきたのであった。

外に出たら急に動物園を見たくなりそちらに歩を進めたが、100メートル程前から門に「休園」という札がしっかりかかっているのが見えてがっかりした。ほぼ30年ぶりに動物園に入りたくなった理由は謎である。

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