「あなたの好きな表面のザラザラ」と、中山智月展

言葉を忘れがちな知人が「何て言うんだっけか、あなたの好きな表面のザラザラ・・・」と聞いてきて笑ったことがあるが、その答えは、「マチエール」。

マチエールというのは簡単に言えば美術作品などの質感のことで、必ずしもざらっとしてたり厚みのあるものでなくとも、つるっとしてたってマチエールはマチエール。ただ、件の知人が「あなたの好きな・・」と言ったのには訳があり、その人は、私が自分の作品のマチエールが基本フラットであっさりしているのにかなり課題意識を持ち、なんかこうもっと重厚な具合にならないものか・・という単純至極な命題でもって試行錯誤していたのを、知っていたのだ。

Gallery Niepce(四谷)に、中山智月氏のフォトコラージュ展示を見に行った。

植物などをモチーフとするキメラ的な妖美な存在が現れる作品の数々だが、これら全てにおいて作品とマチエールががっつり「合っている」のに感動。

使用する紙がマットかグロスかなどで、もちろん出力作品にもいわゆるところのマチエールに関する問題はあるが、大抵の場合自分は写真/出力作品を見ると、イメージが出張っているわりにマチエールについては技術的制限としてなのか意識の向け方なのか、なんとなく物足らない感じに見えることが多かったりする。だから、イメージとマチエールとが合っていると感じる作品は個人的には非常に少ない。一方氏の作品においては、複数の存在がぶつかるようにではなく融合的に組み合っている繊細で緻密な、自然なようでもあり人工的でもあるといったイメージと、工業製品であるところの印画紙の、比較的平滑で均一なマチエールがいい具合で絡んでいた。マチエール単体としてみればイメージを邪魔せず、支える形で自然に存在し、うるさくもなければ足りなくもなく、いわば作品に一体化して溶け込みながら、作品の強度をしっかり上げている。恐らくは作者の意識の問題に違いないと推測できる(フォトグラファーというよりペインターの感じに近いのかもしれない)。

展示で自分が何を感じ考えるかは、行ってみないとわからない。それは極めて個人的な体験で、人は他者の作品を見るために足を運んでいると思いがちだが、そこで出会うものの一部は、まぎれもない自分自身(の価値観やこだわり)である。

「あなたの好きな表面のザラザラ」といわれる位マチエールヲタクの私はこう感じたが、別のことに興味があれば必ずや別のものが見えてくるであろう、懐の深い好展示。

展示情報:
中山智月写真展『光の器―フロ―ラの夜に』
7月20日(火)~25日(日)13時~19時(最終日18時)

◎お知らせ:
是蘭オフィシャルサイトとして以下を新たに開設しています。
(日)https://www.zelan-art.com/t-ja
(英)https://www.zelan-art.com/
ご覧頂いているこのサイトは、是蘭のコラージュクラスのプロモーションサイトに近々改変しますが、ブログ「原初のキス」は今後、この中のプライベートブログカテゴリーとして引き続き継続の予定です。
今後ともよろしくお願い致します。

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