吉川民仁展@ギャルリーためながにて、急ぐ・急がないを考える

自分の勝手な分類として、絵には急いでる絵と急いでない絵というのがあり、ギャルリーためながで観た吉川民仁氏の絵は全然急いでないのだった。

自分の分類ながら、これを言葉で正確に表現するのはむずかしい。急いでる急いでないというのは、技法上描くのに1年かかろうが、30分で仕上がろうが、ストロークの大小や速度、技術的に達者でもそうでなくても関係ない。描く側の言い方からするなら常に、もっと作りたい、はやいとこまとめたい、キレイにしたいといったろくでもない煩悩が油断すると一瞬の隙をついて始終襲ってくる訳で、もう作品を創ってるんだか、煩悩と戦ってるんだかわかんなくなってくることがしばしばだ。だから、そういう煩悩に多かれ少なかれ追い立てられて作者が絵の先に行っちゃう絵はすべて、急いでる絵。そうじゃなくて、作者が絵と不可分に共にいるか、あるいは絶妙な感じで絵に先導させているのが、急いでない絵。ちなみに、世の中に存在する絵画の90%位は実は急いでる絵ではないかと思う。

絵は独自の成り行き及び生命を持っていて、即ち自分とは相当に別個の存在なので、自分が焦ったってどうしようもないばかりか、絵にとって至極迷惑な場合が、多い。氏の作品はごく上品な抑制感があるというか、観ているのはここに展開している実体というよりも、ついに描かれることのなかった何かと共に観ているという感じがある。

氏とは以前ある研究会で短い間ご一緒したことがあるが、こちらも勝手な感想ながら人品卑しからぬお人柄と当時からお見受けしていて、作品を拝見するとなるほど、という感じがする。と、ごく勝手な感想をあれこれ持った展示だったが、この「勝手な考えが発動される」という現象が実は、観て大いにトクしたー!と自分が判断する展示の基準である。

ギャルリーためなが 吉川 民仁 展 (3/21まで)

 

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