基本というもの

基本というのは先人の知識経験の集大成なので決して初歩的ということではない。

むしろもしも基本と言われるものを誰かから習ったりあるいは調べて情報を得るのでなければ、基本及びその重要性に気づくのは結構経験を積んでからということになる。私は美術を高名な美術家の方に手ほどきを受けたが、彼らが伝えるのは言ってみれば表現する際に考慮検討すべきエッセンスの方で、いわゆる基本ではなくましてや初歩的な要素などではなかったように思う。そしてこのブログにも記事を書いたことがあるが、例えば私の先生に構図の理解を深めたいと言ったら構図でなく人間の視覚の原理が重要だと彼は言ったのだ。

ともあれ基本を最初から全部習ってしまったり人から聞いたりしらみつぶしに調べてしまうのは、なんだか少しもったいないし、ちょっと危ないと思う(経験より言語の理解があまり先になると経験に言語の色付けがなされて感覚の純粋性が阻害されたり等々)。ただし、すべて自分で発見していくというのは経験上あまりにも効率が悪すぎる、ということで勉強半分手を動かすこと半分という、比較的穏当な結論に落ち着くのであった。

 

 

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