創られつつある絵にはそれ独自の生命があって、ちょっとやそっとのことでその息の根を止めることはできない。ただ、創り手がその力を隠し、覆い、邪魔をして、弱めることがある。鏡に泥を塗るように。
自分の絵を良くしたい、という思いが強すぎると逆に、そういうことになりやすいのではないかと思う。
絵(やあるいは他の、人間が表現行為として成すもの)の命は簡単に殺せない、なぜなら表現物は制作者自身の力だけで成り立っているものではなく、それまでの関連する歴史はもちろん、空気や重力など、広大と言える自然かつ物理的な存在にもまた支えられているからである。
それは気をつけていないと、すぐさま砂のように指の間からすり抜ける認識だ。でもそれは真実なのだから、忘れない方がいい。