過激な銭湯 

かなりの冷え性である自分は自営業であることも活用し、冬場は一日三回風呂に入ったりするが、家の電気給湯器(深夜電力で沸かすやつ)は湯量が足りず、一日の終わり、最も重要な三回目に入ろうと思うと途中で水になっちゃったりする。そこでネットで調べて徒歩5分のところにある銭湯に夕方行ってみた。

ネットの画像では30代位のぽっちゃり系のおにいさんが番台にいたので、んー、そこはちょっとなあと思いつつおそるおそる入場すると、番台にはまさにその母親世代(というか母親であろう)のご婦人が座っていたのでほっとする。洗い場に入ってカランのお湯を出すと超ぬるい。我慢しながら少しだけ体を濡らしてふたつに区切られたどちらかと言えばこじんまりした感じの浴槽の、泡を噴き出している方に足を入れてみると今度は超熱く、すぐひっこめる。温度計は42度位をさしているが自分の体感温度は45度だ。様子をみていたのか、すかさず泡なしの方の浴槽に入っていた年配の女性が、何度かお湯をかぶってから入らないと熱いわよ、と教えてくれる。そうですか、といってそこらの洗面器で浴槽からお湯をくんで少しずつかけてるとカランから出せといわれ、出し続けてると熱くなってくるから、とまるで生けるマニュアルのごとくなり。浴槽につかっているのがこわいほどに自分には熱いので、座っておられず、壁のタイル絵を見るふりをしてほとんど立った状態で4分ほどすごす。図柄は(これ言うともしかしたらどこかわかってしまい申し訳ないので書かないが)、普通風呂屋には描かれない、でも誰でも見るとどこかがすぐわかるヨーロッパのさる国ののどかな風景で、あひるなんかの姿も見える。

ほうほうのていの感じで風呂からあがり脱衣所にいくとなぜか件の女性がおり(いつ出たんだ・・)、もうでたのか、背中が赤くないからあったまってない、と言われた。

着衣半ばの頃、番台の方からどうもーという男性の声が聞こえ、お客が帰っていったようだった。ふと振り返って声のした方を見ると、それがおっさんだったら(多分そう)、完全に目があってかつ全身が目撃されるに違いない番台の高さ及びつくりだ。なぜか番台とほぼ平行の位置にロッカーがあるから、視覚的につつぬけである。

例の女性が、「今日は湯がぬるすぎる」と番台の女性に文句という程のニュアンスでもなく社交的に絡んでいるのを片耳で聞いてると、ガラガラっと戸が開いてネットに出ていた息子が登場した。きっと交代時間になったのだ。悪いけど落胆している自分のとなりをそのまま普通にさくさくはいってきて、マッサージチェアの調子をチェックしはじめた。

平成に入って26年目だけどまだ昭和は終わってない。昭和っていうよりここはまだ江戸すら終わってないかもしれない。

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