「河口龍夫展 言葉・時間・生命」@東京国立近代美術館

東京国立近代美術館に、「河口龍夫展 言葉・時間・生命」を観に行った。

闇を金属の箱に閉じ込めて’Dark Box’とか、原始的な風貌の岩にいかにも現代な蛍光灯を突き通す、とか、生命や発展の象徴である種子を鉛で覆う、とか、なんだか図式的にすら感じるコンセプチュアルな作品群で、え、こんなんでいいの?とある意味衝撃。モチーフAに非Aを対峙させる構成が多くて、他者性とかアウフヘーベンとか、ゆらぎ、ずらしなど、コンセプトに収まらない過剰さはない感じだ。

だから、作者本人の意図はともかく、観ているとこれはこういう意味で、と色々な解釈を「言葉で」説明することができる気がしてくる。

物理的な仕上げについても、こめかみが痛くなるようなキリキリした審美的感覚を駆使というより、きれいだけどディテールがなくて、「考えました→作りました」って感じ。

よく、とても美しい作品を見ると自分の視覚システムが一時的にそっちに寄ってしまい、外に出たときに街がものすごく汚く見えていやになるが、今回はコンビニやらガードレールやら地下鉄構内のそっけない階段や天井を見ても、むしろ氏の作品を思い出しているのだ。

と、書いてくるとまるでネガティブなコメントみたいだけれど、基本的に、シンプル、ミニマルなものに対して偏愛があるせいか、嫌いどころかとても楽しく、面白かったんですね。なぜか観ているうちに制作上のアイデアも次々生まれ、これらの作品と自分がとてもよい関係で「交流」できた展示だった。

河口龍夫展 言葉・時間・生命 (東京国立近代美術館 12月13日まで)

 

 

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