リペルペーパー

リペルアートには、リペルペーパーを使用する。

これは紙とはいっても合成樹脂が原料で、水を吸い込まず、よって水気に触れてもたわまず、よれず、へたらず、反らないで形状が非常に安定している。こしがあって皺もよりづらい。

ウエマツさんで販売されているものは薄口と厚口で各種大きさがあるが、薄手のはほんとかなりぺらっぺらだけど、私など四六判(約80x110cm)の大きさのものを作業台に上げたり下ろしたりを繰り返してもイメージに対して問題になるようなしわが容易にはよらないので、かなり扱い易い。

水で伸びないということは、水分を多く使う技法でもたわみを避けるために水ばりする必要がなく、パネルなどに貼る際は直接のりで貼ればよいようである。

他に良い性質としては、樹脂性で耐水といっても塩ビのように素っ気ないいかにも工業製品の風合いでなく、微かな黄味を帯びた色味やちょっと粉っぽく見えるマチエールが結構上品なこと。白地が見えてても問題がない。

更に、自分の場合制作に紙やビニール性のマスキングテープを多用するのだが接着が非常によくて、リペルのようにゆるゆるの液体をおいても輪郭に沁みてしまうことが殆どないのが気に入った。

(但し注意としては、アクリル絵具を直接のせて後でその上にマスキングテープを施すと剥がす際にしばしば基層から剥がれてしまう。この点はマスキングを使わない場合は問題がないとは思う。)

もちろんカンヴァス地や和紙、個々の洋紙にはそれぞれの特徴や魅力があり、技法とのマッチングはよくよく検討する必要があるが、リペルペーパーは紙自体としてなかなか興味深く、和紙とも洋紙ともカンヴァスとも違うし木とも塩ビとも違う、これは美術の支持体としては「こういう存在」として常識を超えるユニークさをもった新しいカテゴリーだ。リペルアートに限らず使い手がありそうである。

リペルとマチエの両液で行なうリペルアートについては、普通の紙や、ニスなどで防水性を付けた紙も使ってみたが、他の支持体でははじき効果が十分発現せず(表現としてそれでよければもちろんかまわないが)、まずはメディウムの特性を理解するという意味でもリペルペーパーを使うのが最適だ。リペルペーパーには例えばスプレーなどで薄い層をつくっても効果がさほど薄れないことは確認した。ただアクリル絵具などの層を先に創ってしまうと効果が出づらくなる。

いずれにせよこの紙の価値はただ一つに集約されるものではない。まあ、筋のいいものっていうのはたいていの場合、そういう性格を持っている。

同じカテゴリーの記事

  1. たわまない支持体~リペルペーパー

  2. リペルアートのメリット

Blog「原初のキス」