流血探偵 

今朝制作していて左手の薬指あたりが真っ赤になっているのに気づいた。赤い絵具は使ってない。出血である。

実は昨日も、中指から血が出るという事件があった。よく見たら指の側面に7ミリ位の細い傷がついていた。どこで切ったかわからなかった。

昨日は中指、今日は薬指、二日続けては異常だ。薬指の脇に昨日と同じような線状の傷がついている。自分は大いにあわて、もしかしたら指先がどんどん切れるという新種のビョーキにかかったのではと思い、Google検索に走りそうになった。でも昨今乾燥しているせいで、皮膚表面が弱くなって自然に切れちゃうのかも、とこれはこれでさほど現実味のない仮説をたて、傷の方はティッシュで押さえてやりすごす内に血がとまったので、そのまま制作を続けた。でも私の探偵チックな灰色の脳細胞は密かに活動しており、その後この奇妙な現象の原因がわかったのである。

私はこのところ木製パネルを支持体に使っている。木製パネルとは木枠に板を張ってあるものでいわゆるカンヴァスのような形態をしているんだけどカンヴァス地部分が板になっていると思って頂けばよい。普段は技法の都合上作業台に平置きしてその上で作業しているのだが、そこから下ろし、椅子や壁に立てかけたりして遠目で全体を見ることがある。作業台と床の間を作品はしばしば行き来するが、その際、木製パネルの縁を両手で持って移動する。その時に指がパネルの縁を数センチばかり滑って、折からの乾燥もあるんだろう、指の側面が切れるのである。

自分はこのことに、まさにその動作をした瞬間に気がついた。昨日と今日切れた場所は検証するとばっちり板の角にあたるところだった。紙の縁で指を切る時などは紙の厚みが薄いせいか切れ味よくまた深く切れるのかえらく痛くてすぐ気づくけれど、板の場合ややそれより鈍角で皮膚の中にも入りづらいせいかすぐには気づかないんだろう。紙よりは浅く、幅広の傷・・で、少々遅れて流血の事態に驚かされるという訳。

それに気づいた途端、溜飲が下がると共に若干文脈は異なるかもしれないが私がこの世のあらゆる名言の中でも最も好きな、中国の古い言葉、「耳は忘れ. 目は移ろい、行なえば悟る」を思い出した。

もしググってたら毎日のように指先が切れる的な奇病を発見して無駄にびっくりしてたかもしれない。

やっぱり実際動いてみることで真実が現れることが多いのだなあ(しみじみ)。

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