以前仕事で、アムステルダム郊外にある九官鳥みたいな鳥がロゴになっているホテルに泊ったら、以下のようなことがあった。
- ロビーでツアコンがお客さん達に、「ここは鍵が開きづらいので、難しかったらドアの前に座って待っててください」と説明しているのを横目にチェックインを済ませ自分の部屋に向かっていくと、ドアの前に何人も人が座り込んでいる。
よくある旧式の長っぽそい鉄の鍵だが鍵穴の中でぐるぐる回るだけで確かに開かない。フロントの女性にクレームしたら、「もう、まったく、一日中これだわ!」と逆ギレした彼女が部屋まで来て開けてくれた。右に三回左に二回的な、金庫やぶり的ノウハウが必要な鍵なのである。初めてだったら開く訳ない。 - バスタブの横のタイルを貼ったちょっとしたスペースに、石膏でできたベートーベンの頭像があり、ハデに傾いていた。見ると下に像では隠しきれないほどのおっきい、ちょっとした爆撃を受けたような穴が空いている。体を拭こうとしたらバスタオルに血とおぼしき大きな乾いたしみがついていた。
- 夜中の2時から明け方まで、廊下で奇声をあげている人々がいる。
- 仕事から戻ってきたら、部屋に置いておいた靴が部屋のはしとはしに一足ずつ放り投げられていて、ベッドは出かけるときより更に乱れていた。床は3年分ほどの綿ぼこりやら糸くずだらけ。
チェックアウトの朝、ホテルにクレームのレターを書きかけたが結局やめた。
自分の中に、どうしてもおもしろさを超える怒りというものが、発見できなかったらである。
おもしろさにほだされて、結局の処トクした、という感覚になってしまっていた。
ということでこのホテルは未だ、改善されぬまま存在している可能性がある。