恋の予感

「恋の予感」というのは安全地帯の80年代の大ヒット曲だけど、Webで歌詞を見て驚いた。井上陽水氏の作である。

自分の解釈ではこの歌詞においては、ある女性に心から懸想していてその女性からまだ?あるいは永遠に?愛してはもらえない男性が、その不遇を内心かこちつつ、そんな風に僕を無視してるとだとろくな目にあいませんよ、と暗になじっているようにみえる。非常に高慢で、ちょっと天上界からその女性を見下ろしている天使のようなニュアンスがあるが(星の間をさまようとか夢の続きを見せられるだけとか、ろくでもない予言めいたものにその雰囲気は現れている)、結局のところイヤミっぽく情けない小人物ような感じもまたある。この男いったい誰なんだ・・、でもやっぱりヘンテコな人?というのが歌詞からの自分の感想。もちろんこういう不可解な歌詞を創ることのできる井上氏は感服に値する。

ちなみに同じコンビネーションで先に作られた「ワインレッドの心」という曲もあるが、こっちの方が男心に若干の希望めいたものがほのみえる。歌詞だけ見れば、男性の思うようには事態は全然進展せず、業を煮やしてあるいはあきらめの境地が深まって、「恋の予感」へとつながっている。

もとい、「恋の予感」が安全地帯の玉置浩二氏による作曲、声及び歌唱技能により唄われてしまうと、上述の歌詞の印象は一変するのだ。歌として聴くと突然、男性の女性に対する切実かつ絶望的な求愛歌のように思えてくるし、場合によってはその男性の姿さえかき消え、単に一種の典型的女心が全女性を代弁して女性自身の目線から唄われてる象徴性の高い作品のようにも聴こえてくる。

歌詞と曲/歌唱の双方の多義性及びその関係性がねじれて、非常に複雑なことになってる・・・。

それがため人間の脳は無意識的に答えという安定を求めてさまよい、結果この曲は大ヒットしたのではないかしらん。

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