マチエール採集の収穫 ~ FACE展 2019

これだけ種々様々なイメージが世界中に氾濫し、特にネットの普及によって容易に手に入る今、なぜ実際の展示に足を運ぶかといえば自分の場合それはマチエールを見に行くという目的がかなり大きい。
マチエールを見れば則ちプロセスが類推できることも多く、参考になったりするのではというはっきりした下心がある。マチエールばかりはモニターで見ていても正確には分からない。なぜならそのイメージは必ずやモニターの表面の素材のマチエールになっちゃってるのだ。その素材の奥から光が照らしているという、これが結局は我々がネットから見る全てのイメージの表面ということになる。

前置きは長かったがVOCAよりは更にこれぞ平面という形の作品の有名コンペ、FACE展 2019(損保ジャパン日本興亜美術賞展)に行った。グランプリの庄司朝美氏の作品の前に進んだ私はおお!と思った。思いもかけず作品がアクリル板にマウントしてあったから(いやガラス絵みたいに裏から描いてるのかも・・)。ネットやポスターでさくっと見ていた時は、書いてあったかもしれないけど気づかず、前に立って初めてその強力にてらてらっとした表面・・普通の意味でのマチエールとちょっと違うがいずれにせよマチエールだ~それがまた中央で上下2枚を継いである、に気づき、そしてその奥から強度のあるイメージが表のアクリル板といい具合に互してこちらに迫ってくるのを愉快だと感じたのであった。

イメージ自体も面白い。大抵の絵画は空間的時間的に、それとつながってどこかしらに存在する全体における部分であると自分は思っているが、そうしてまた特に具象絵画においては、「これの外、あるいはこの前後の時間どうなってるんだ・・」と思わせるものが個人的には好きなんだけれどもそういう意味でもこの作は面白かった。

作者の方には多分何か想定している物語はあったかとは思う、そして今ネットで調べたらそれに対する言及がある可能性もある。でも自分は調べないのである。
先日あるカンファレンスの懇親会で初対面の男性と話していて、たまたま自分が「何か疑問に思った時ネットで調べると結構すぐ答えが出ちゃってつまらないのであえて調べないんですよ」と言ったら彼が、「あ、それ最近流行ってるんですよね!」と返してくれた。そっか流行ってるのか・・・それはなかなか喜ばしいことのように思う。というわけで今回もその戦略を取ることにした。自分で想像する方が楽しい。

FACE展 2019
3月末までです。

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