エルズワース・ケリーは米国の画家で、ハードエッジと呼ばれる境界のくっきりした幾何形体と色彩の絵画で知られる。
彼の言葉に、
“In drawing, I don’t erase. I believe the original gesture has to be the best.”
というのがある。
絵を描く過程過程で最初にとる動作が最もイケてるはずというのは、経験的にはよくわかる。尤も、その一挙一投足の直前に、余計なこと考えてない(動作を干渉するような心身のノイズができる限り抑えられている)ことが条件だが。いずれにせよやったことを「修正する」という構え、これがうまくいくことは、ごくごくまれだ。「修正」するくらいなら、気構えだけでももう一度、original gestureを発動した方がいい。
以前このブログで書いたが、アレクサンダー・テクニークという身体技法の世界的教師、ウォルター・キャリントンの言葉に、“Original shape is always better.”と言うものがある。上の言葉と、なんだか似ている。
この言葉が含まれている著書ではありませんが、昨年、彼の講話録を翻訳しました。
因みに私は比較的書を見るのが好きなのだけれど、考えてみたらケリーの言うoriginal gestureの痕跡をもってのみ成り立っているからかもしれない。