ディテール

今いるホテルの壁紙は、3センチ弱くらいの幅の白と薄緑のストライプである。白い部分はごくうっすらとベージュがかっており、光があたると特に、いくらか金属めいた光を放つ。白と緑の部分、全体に眼をこらしてやっとわかるくらいの、ちりちりした模様が入っていて、小花の形を模しているのか単なる抽象的な模様なのかはぎりぎりのところで判別できないのだけれど、その花弁にあたる部分は1ミリの幅に3本くらい、ものすごく細い線が入っている。緑のところは何と言うか、抹茶をミルクでずーっと薄めていったような色だ。他の緑よりもどういう訳か、見ていると何かを思い出しそうになる色である。実際ヘミングウェイの短編集に、「何を見ても何かを思いだす」というのがあったのを今、思い出した。

現実のありとあらゆる場所に数えきれない、とらえきれない程の細部がある。そのことと、何万人という単位で人々の命が失われたことは、理性で理解しうるバランスというものを、超えたところにある。

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