カレーとコンバイン

レストランでビーフカレーを食べていた友達が、「天かすが合いそう」とつぶやいた。確かに、大きめの肉がごろごろと入った、デミグラスソースのように黒っぽいカレー(おそらく辛いというよりこってりとコクのある)に、つぶつぶカリカリでキツネ色の天かすをのせたら見かけも歯触りも味も、すごく合いそうだ。

そもそも、「合う」とは何か。

世の中おそらく何万通りもの「合う」があり、コラージュなどにおいてはむしろ「全然合わない」ということが「すごく合う」だったりする。上述の友達の言葉もある種コラージュ的である。

アメリカのラウシェンバーグというアーティストにコンバインペインティングという作品群がある。立体にしろ絵画にしろ、独立した存在を唐突に組み合わせて一つの作品とするもので、例えば古タイヤや椅子の現物を、抽象絵画や古典画からの引用に合わせたりする。それら相反するものはぶつかりながらもある美学的な効果を生み出すべく統制されており、彫刻と絵画、創造物と既成品の境を超えて、この世界の新しい調和のありよう、すなわち「合う」を、提示するのだ。

ところでモナリザには、白い楕円形のお皿に入れたカレーライスが合うような気がしてならない。理由を探っていたら、大昔レトルトカレーの宣伝に出ていた女優の松山容子が、こころなしかモナリザに似ていたからかもしれない、と思った。自分の感じる「合う」は、当然のごとく個人的な体験に基づくものもある。それでももし、松山容子を知らない例えば海外の人がモナリザとカレーが「合う」と思ったとしたら、その時感覚的普遍性という興味深い問いが立ちあがるのだ。

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