豆苗  

先ごろテレビで豆苗は食べた後、根っこを水に入れておくと伸びて再収穫できるというのを見て、好奇心からやってみた。水に入れて暫くたつと色が異常に薄くなって、日頃いないハエやダニなどが突然部屋に現れたりしたので(今から思えば関係なかったかもしれない・・)、神経質な自分はおびえて思わず捨ててしまいそうになったが、それでも窓際に向けてぐ~っと斜めに懸命に伸びていったりするのがおもしろくて、せっせと水を変えて観察していた。ちなみに斜めになったら自分はあまり偏るのもどうかと思い逆の方に向きを変えていたのだが、30分もたたないうちに今度はまた窓の方に向かっていくのは驚きだった。こちらは親切のつもりだったが豆苗にとっては単なる迷惑だったかもしれない。

ともあれ、テレビでやっていたように10日ほどたつと立派に「食べられる」感が満載になってきた。しかしその頃には情が移ってしまっていて、食べるなんて、一度も宝くじを買ったことのない自分が一億円当ててやる、と思って宝くじ売り場に走るくらいありそうにない行動になっていた。そこで、宝くじ売り場ならぬ近所の園芸店に走り、元々99円だった豆苗を植える鉢及び土及び水はけのための軽石、豆苗はツルが伸びるのでそれを絡ませる棒を、計5500円程で入手したのであった。

で、土に植えて現在ベランダに置いてあるが、非常に心もとないことに、枯れてはいないものの今ひとつ元気がない。園芸など柄ではない自分だが、ツルを絡ませようと棒に軽く巻いてみたりとかしてるんだけれど、自分からは巻いてくれない。ぜひ生き残ってほしいので豆苗さんの健闘を心から祈るばかりだ。それに対して自分ができることがどういうことなのかは、全然わからない。

これは少し何かに似ている。自分が美術で伸ばしたい筋があるとき、それがたまさか自らやり始めたこととはいえ自分とは別個の生命を持った存在であると感じることがあるのである。私自身はそのものをまだすごくよくは理解していないのだが、わかる範囲で世話をする。そしてなによりその生命が永らえて、いつか花を咲かせたり実をならせたりすることが、心からの自分の希望なのである。

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